前名ガイウス・オクタウィウス。
ユリウス・カエサルの血縁上にあり、乞われて養嗣子となる。改名後の名前はガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス。
カエサル暗殺後、アントニウスと一時交戦するが、対元老院政策のため和解、レピドゥスとともに第2回三頭政治体制を樹立する。ブルートゥス一派をフィリッピの戦い(前42年)に撃破したのち、クレオパトラのエジプトの処置を巡ってアントニウスと対立、篭絡された彼の軍をアクティウムの海戦に破り、アレクサンドリアに敗死せしめる(前30年)。
実権を掌握した彼は官僚制を創始し、枢密院を組織し、自ら軍の最高司令官 Imperatorとなり、その栄光の頂点にあって突如全権力を元老院に返還する。時に前27年。元老院は彼に尊厳者Augustusの称号を贈り、権力を再度握るよう要請する。すでに首席元老院議員Princeps Senatusの称号を受けとっていた彼は不承不承と見せてこれを受諾する。
対外的にはカエサルの遺産をよく守ったものの、ウァロの敗北(トイトブルクの戦い。9年)によりゲルマニアの大半を喪失。国内では政治体制を整え、商業の発展に尽力し、通貨の安定をはかったが、風俗道徳の再建に失敗、さらに幸福な家庭の建設にも失敗する。
アウグストゥスの3番目の妻リウィアの連れ子。
名将マルクス・アグリッパの娘ウィプサニアと結婚するが、父帝と母によって強引にユリアと娶される。
青年時代イリリア、パンノニアの軍団を率いて蛮族を撃退、公正実直かつ的確な統治を行い、55歳で帝位を継いだのちもローマの発展に貢献する。
一方で弟ゲルマニクスの暗殺犯と誹謗され、また家庭内暴力を振るったと詰られるが、事実無根、後者に至ってはむしろ逆といわれる。近衛隊増強を始めたのもこの帝であり、早くも長官セイヤヌスの専横が見られた。
イエスの刑死(30年頃)。
初期の治世は善政と云われ、民会権限の復活と、貧民救護に功あり。
のちに異常を来たし、狂帝と化す。妹ドルシラと情交し、エジプト文明に耽溺し、禿頭の人間を殺戮、哲学者撲滅に励む。
近衛隊長ケレアスによって暗殺。
近衛隊により推戴。白痴と見なされていた。ガイウスの叔父。
先帝の悪法を廃し、公共事業を推進、ウィチノ湖の干拓を完成させる。また、ブリタニアに遠征、市民の予期に反してこれを制圧し、凱旋する(44年)。
もっとも例外なく家庭の不幸に悩まされ、メッサリーナ、アグリッピナに翻弄されて、最期は毒殺される。
師セネカの影響もあってか最初の5年は善政を敷く。学芸を愛し、高じて政務を顧みず。高利貸しとしても悪名高いセネカと、近衛隊長ブルスに牛耳られた帝国はなお繁栄を続けるが、ネロがポッパエアに陥落してのち、無道無惨の時代がくる。
母アグリッピナの暗殺、前妻オクタウィアの処刑、セネカの自殺、元老院議員への侮辱、帝自ら詩のコンクールに出場、受賞して凱旋式を挙行。とどめに64年のローマ大火。都市再建のための放火とも云われるが、少なくとも燃える町を眺めて詩吟に興じたというのは、後世のキリスト教徒による誹謗。
ガリアとヒスパニアの反乱に驚愕し、逃げ切れぬと判って自決する。
ユリウス=クラウディウス家の終焉。
法務官、アクィタニア州長官、執政官、ゲルマニア総督、アフリカ知事を歴任し、ヒスパニア長官の時に反乱を起こす。属州時代の統治は規律と正義を重んじ、軍紀の更正に尽力するが、やがて無精をきめこむ。
ネロ自決後軍をもってローマに入り、至高権を授かる。
ときに厳格、ときにいい加減な統治指針のあげく、元老院、騎士、市民のみならず、軍からも最終的に反発され、刺殺される。統治7カ月。
ルシタニア属州総督としては公平かつ厳正な統治を行う。
ネロに夫婦仲を裂かれたその復讐にガルバに加担し、次にガルバに養子にして貰えないと知ってこれを排除する。
統治95日。ほとんど何もせず。ゲルマニアのウィテリウス造叛征討に向かい、緒戦に勝つも、ベトリアクムの決戦に敗れ、ブリクセルムの後営にて自刃。
アフリカにおいては高潔さを謳われ、ローマにあっては泥棒と謗られる。
残忍非道と云われ、貴人、学友、知り合い、なんでも騙して殺害するのを趣味とした。
ウェスパシアヌスの反乱軍に連敗を喫し、パラティウムに潜伏したところを見つかって、汚辱のうちに嬲殺される。
軍と財政の再建に尽力。横暴を極める軍隊の規律を引き締め、苛斂誅求と官職売買によって国庫を潤す。息子より現実主義で、毒をもって毒を制する術に長けていた。
その十年の治世は、アウグストゥス以来の善政とも云われる。
レアテの田舎で腹を下し、病没。
イスラエル暴動に対する鎮圧作戦に従事、70年のイェルサレム破壊によってこれを完全平定する。この功績により、父帝は凱旋門を建てる。
ポンペイの埋没、ローマの大火、疫病の流行に対し、国費をもって救済に当たる。
極めて情け深く、請願に来る市民を失望させぬよう計らうことを旨としていた。
熱病のため、突然死する。