ドミティアヌス Domitianus

 ティトゥスの弟。
 風俗の矯正と法の公正化に尽力。戦争を好まなかったが、事情によりやむなく外征し、ダキア、カッティ族と交戦、さらに高ゲルマニアの内訌を平定する。先年の大火によって荒廃したローマを再建し、ワイン熱に浮かされた市民を掣肘、穀物生産高を維持する。
 自らを主君dominusと呼ばせ、東方風の宮廷儀礼を導入した最初の皇帝となる。
 晩年猜疑心に捕らわれて密告制度を奨励、暴虐の限りを尽くしたのち、官吏らによって暗殺される。フラウィウス家の終焉。

・雷よ、いい加減にもう、これと決めている人間に落ちるがいい。
(落雷が8カ月に亙って続いたとき)

・これだけだといいのだが。
(死の前夜、腫れ物を引っかいて血を流したとき)


ネルウァ Nerva

 先帝の悪法を廃し、貧民、弱者の救済を行う。財政を再建し、近衛隊の専横を制止するが、老齢のため全うできず。五賢帝に数えられる最大の理由は、トラヤヌスを後継帝に指名したこと。

・私の首を切れ。
(近衛隊の威嚇に対し)


トラヤヌス Traianus

 対テウトネス族征討中に推挙されるが、ローマ帰還は就位2年後。
 もっとも強大なダキア族に対する2度の勝利と、東方戦争(対アルメニア、メソポタミア、アッシリア)の連勝によって、帝国はカレドニアからペルシャ湾までの最大版図を記す。
 都市計画に功績をなし、水道、港湾、街道、広場、記念円柱など、数々の建築物を完成させる。
 キリキアのセリノにて病没。


ハドリアヌス Hadrianus

 帝国の領界を縮小し、維持に努める。法体制を整備、パンテオンとティボリの別荘を建設する。
 行幸を好み、治世の大部分をローマ以外に過ごした。
 美少年好きで、なかでもアンティノスに惑溺する。ほかに詩と著述をよくした。
 テヴェレ河畔に墓陵を築く(のちの聖天使城Saint Angelo)。


アントニウス・ピウス Antonius Pius

 私財を国庫に投じ、財政を再建する。
 対外的に強圧手段を執らず、かえって蛮族の来寇を招くこととなる。
 敬虔であったが、狂信的ではなかった。

・無事平穏を守れ。
(死に際し、近衛隊に)


マルクス・アウレリウス Marcus Aurelius

 蛮族の再寇に悩まされ、ゲルマニア、ガリア、ダキアを相次いで征討。エジプトの反乱を鎮定後、ゲルマニアの内訌平定に向かうが、途中ウィエナにて病没。
 「瞑想録」ほかの著述の多くを、幕舎にて書いた。


ルキウス・ウェルス Lucius Verrus

 マルクス帝の共治帝。
 同名の父もハドリアヌスに指名されるが早死にする。
 脳天気で女好き。ペルシア戦に派遣されるが、情婦パンテアの尻を追っかけているうちに麾下将軍アウィディウス・カッシウスの采配によって凱旋将軍になる。
 ローマにペストを持ち込み、自らも病死。


コンモドゥス Commodus


ペルティナクス Pertinax

・余は暴政汚辱によって富を集めるよりは、むしろ清廉を守って貧国の統治に甘んずる。
(元老院布令に)


ディディウス・ユリアヌス Didius Iulianus