depuis 19 septembre 1998


私はこうして死にました
目次および収録テキスト内容見本

目次:
エリック・ジョンスター
インディ・ジョーンズ
マイケル・ジョンスター
マイケル・アンダーソン
フェン・スタック・ローランド
パープル・レッグ・ムラセ
ケンスケ・コバータ
フレデリック・ブラウン
サム・エルヒュートン・ムラセ
ロバート・スミス
スティーク・ジョーンズ
シューレ・グロルマン
インディアナ・ジョーンズ
ジム・ローランド
ジェイムズ・ローランド
サー・ロアルド・ルシマン
ラファエル・バートン
ローリ・ルシマン
エリック・バートン
植田竜之介
小林君
宮沢悲一
十勝又夫
茶野目洋子
金田一秋彦
名無野権兵衛
あけちの兄
K.キドウェリィ
レッド・バトラー
トリシア・ストーナ
ジロウ・ニヤケ
ロバート・チュン・キートン
フィリップ・モーリス
ジョン・ローランド
ジャーク
死亡記録

3:マイケル・ジョンスター 37歳 学者 1921年6月27日

 灰色に漂うロッホ・ファインの上をてんでに武装した一団のルナティック達が、これまたてんでに雄叫びを上げつつ手漕ぎボートを駆って迫り来る。掩蔽の巨石の陰から躍り出ると、雨霰と降り注ぐ散弾をかいくぐり、我らが特攻野郎マイケル・ジョンスターは自慢の12ゲージ・ダブルバレルをぶっぱなす。忽ちボート上の3人の狂信者がアクロバットを完璧にやり遂げて背後の湖水に没するや、我らが特攻野郎M.ジョンスターは輻輳する銃火の焦点で一声高らかに哄笑し、そのまま先の3人に倣ってどうと後ろへくずおれた。
(ロッホ・ファインの謎)
教訓:銃器を過小評価してはならない。


18:ローリ・ルシマン 27歳 陸軍将校 1896年4月27日

 慢心が不注意を呼んだのだろうか。一行の勝利が確固たるものになった一瞬、ローリは窓の外に群がる顔のない蝙蝠人間どもにむんずと捕まえられた。仲間が救けだそうとする暇もあらばこそ、彼を捕まえた不気味な生物は空高く舞い上がり、それから彼を叩き落とすかと思いきや、いきなり彼を猛烈にくすぐり始めたのである。この奇妙な習癖こそ、現し世遥かに巍峨として聳えるングラネクの頂にて、神々の肖像を護る夜のゴーント達が、聖域を侵すものどもを懲らしめる時のやり方なのであった。
 このままでは彼がいずこかへ連れ去られてしまう。そう考えた友人の一人は、ローリが巧く着地してくれることに一縷の望みをかけて、かの顔なくして忍び笑いを漏らす生き物に狙いを定めると、ままよとばかりにトリガーを引き絞った。 
 果たして、数グラムの金属塊は狙いあやまたずに異界の生物を貫いた。夜よりも暗い体が悲鳴を上げるローリとともに落下していき、地面に叩きつけられ、そして、──ともに死んだ。ローリの顔には傷ひとつなかった──ただ、凍りついた笑いに歪められていたのみ……
(ヨークシャーの怪事件)
教訓:敵を侮ってはならぬ。


34:ジョン・ローランド 35歳 医師 1925年7月10日

 俺と名うての詐欺師ジャークはたった今破壊されたばかりの階段を攀じ登り、未知なる3階の大方を荒らしたばかりだ。俺達の目の前には不気味な文字の刻まれたドアがある。その文字──俺にも読めるチャイニーズ・キャラクターだった──はこの向こうが危険極まる領域だということを示していた。
 鍵の掛かったこのドアを開ける手順はすこぶる簡単だった。手榴弾のピンを引き抜いて、それから数秒後の大音響とともにドアはけし飛ぶ。これだとノブを回す手間まで省けた。そして続けざま室内にショットガンをぶち込み、さて煙が晴れてみると……
 女丈夫張玲扇(チャン・リンシャン)はテーブルの向こう側に平然としてつっ立っていた。
 何事にも動じないジャークがよく通る声で下の仲間に彼女が此処にいることを告げ、それからこちらも平然として──としたつもりで──彼女を見たのが運の尽きだった。と言っても別に張がマシンガンをぶっ放したわけじゃない。彼女は丸腰の上に、ただ婉然として微笑んでいただけだった。しかし、そう、それが罠の全てだった。
 俺がジャークの素振りに不自然なものを認めたときは既に遅すぎた。奴はゆっくりと俺の方を向いたが、その時奴の手にしたコルト.45は既に火を噴き終わっていたのだ。
 全身に猛烈な勢いで拡がっていく麻痺感の中で、俺は見た。阿片中毒者のようなあの恍惚とした輝き、魅せられたる者の光を、ジャークの両の眼に。
(Sp.上海の緑)
教訓:一瞬の躊躇が死を招く。



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