ESSAI
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誤記誤用語句字典

平成16.11.28



 はっきり云って随想というものではまったくないのだが、今日は日本人として、なんとなく許せない誤記誤用を論らって定義してみる。例によってカルシウム足りないと感じてるのはわたくし本人だ。

<以外に(と)>

    自分が想像していたこと以外の事象・事態に直面したときに使われる形容詞句。
    例:「以外に簡単だった」「以外と青い」

    当然「意外に」。ネット上の文章では体感8割以上が誤記している。

<うる憶え>

    涙なしには思い出せないあやふやな記憶。

    「うろ覚え」が正解なのだが、誤用のもとは訛った発音からか?

<確信犯>

    ある行為(特に触法行為)がどういうことなのか、あるいはどういう結果をもたらすのか、判っていてそれをあえて実行する人。

    ある種の思想、信条に基づいて違法行為を働く人のことを云う。単に犯罪になることを知っているだけでは、ただの犯罪者でしかない。まあそうなんだが、もはや厳格な意味で使っているやつもそういないな。

<確立>

    逸物が確かに立つだろう可能性。

    ある事柄を強固なものにする、確(しか)と立てるから確立なんだよ。可能性、つまりポシビリティは、ある事象が確実である、確実になると云える割合、確からしい率なんだよ。誤用(というか誤変換)が浸透しすぎな単語のひとつ。

<姑息な>

    卑怯な。

    「一時しのぎ、その場しのぎの」、が正しい意味。つまり対症療法的なことでもあるから、卑怯なときもあるが、要は本質的解決方法ではないということだ。たとえば、雨が降ってきたので新聞紙を傘代わりにするのは、姑息な手なのだ。最近初めて知った。

<コミニュケーション>

    込み入った事柄を口伝えに広めること。

    もちろん「コミュニケーション」。口コミという言葉から逆推して誤記(発音)されていると思しい。

<シュミレーション>

    物好きが趣味のつもりで暇な時間にやるサルマネ。趣味で食べる携帯食のことではない。

    もちろん「シミュレーション」。語間のミュは発音しにくいのか。

<煮詰まる>

    物事が、ちゃんとまとめきれずに収拾のつかない、あるいは把握できない状態になってしまうこと。大概の場合、まったく煮詰まっていない(正しい意味で)状態。
    例:「煮詰まってきたので頭を冷やすために休憩しましょう」

    これは比喩表現なので、比喩の通り、具(物事)がうまく溶けあって仕上げ(結論)を待つだけの状態を指している。意見が錯綜して収拾のつかない状態ではもちろんない。どうやらみんな闇鍋しかやったことがないらしい。

<ファンタジック>

    ある種の炭酸飲料のようにしゅわしゅわした感じの、刺激的だがとりとめもない、子供じみた。

    「ファンタジー」の形容詞形は「ファンタスティック」。誰が云いだしたのか知らないが、もう立派な和製英語なんだろうな。

<フューチャーする>

    未来に儲かることをあてこんで人気のある他人の作品や事象をマネしたり取り入れたりすること。

    時々聞くが、正しくは「フィーチャー」だ。捕らぬ狸の皮算用ばっか考えるからこうなる。

<役不足>

    自分では気づいていない自信家が、謙遜のふりをしてよく使うさりげない自慢。
    例:「とんでもありません、私には役不足です」

    大役を務められないときは自分は「力不足」だと云うのがふつうなのだが、世間には隠れ自信家が実に多い。

<ロマンティスト>

    頭ん中がロマンでいっぱいで正常感覚がストを起こしてしまった人。

    「ロマンティシズム」の人物語尾変化は「ロマンティシスト」。「ロマンティック」からの誤変化なんだろうが、これも誰が云い出したのかすっかり定着した感がある。言葉は生き物なのだから、今更目くじら立てたところで詮無いことなのか。

このほかにも特にネット上では不必要な漢字変換が多くていらいらする。最近は変換システムもよくできていて語義を表示してくれたりするので、ますます書けないような漢字を使うばかが増えている。原稿用紙に文章書かせたらいったいどんなものがあがってくるのか、大変興味深い。

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