F1観戦記:2001年シーズン


    最近暴言を吐いていないので、気持ちが悪くってしょうがない。
    F1観戦記という名の、言いたい放題である。

    R1オーストラリア
    開幕戦、ひとり時流に逆らってローノーズで来たフェラーリが、無事にミハエルのポールトゥウインでまとめ上げたので、とりあえずぞっとしなくて済んだ。昨年と同様、マクラーレンは潰滅するかと思ったが、デイビッドが頑張ったのは望外だ。ところで例のアクシデントだが、一般道だって後続の車に第一の回避義務があるんだから、ブレーキを踏むのが早いなんて難癖は文字通りの難癖にすぎない。これで半年も経たないうちに2人目の死者が出てしまったのはなんともやるせないけれども、モータースポーツは死と隣り合わせのものだから、じゃあ容認されるべきかってえと、なかなかそうもいかないご時世になってしまった。タイヤ1本分の隙間にジャストミートしたタイヤが直撃するというのは、確率世界ではないに等しいものだけれども、現実に起きてしまった以上、それを防ぐ手だてを講じる義務が、興行側にはあるだろう。しかしまあ、人一人死なせたからって、落ち込むほどやわな作りしてるのかねえ、あのカナダ人は。

    R2マレーシア
    序盤のスコールにフェラーリ2台がランオフしたときはどうなるかと思ったけれども、その序盤のうちにトップ回復するんだから、今年のフェラーリはどうなってんだ、とも思った。デイビッドもよく粘ったが、調子づいてるときのフェラーリ、というかミハエルには太刀打ちできようもない。表彰台を守っただけでも、称賛に値しよう。ミカの調子が悪いのが気がかりと云えば気がかりだが。

    R3ブラジル
    結局赤い皇帝(と云うとソ連か中共なんだが)の進撃に待ったをかけたのは、去年と同じデイビッドだったようで、このまま去年と同じシーズン展開になるんじゃねえかと危惧してみたりもする。ルーベンスは、しかし、ここブラジルではいっつもいいことないよねえ。
    シーズン前から、靴屋つってもただの運転手だろ、と怪気炎を上げていたファン・パブロだったが、ここまでどうもぱっとしなかった。結局ただのほら吹き野郎だったかという矢先、あのねじ伏せるようなオーバーテイクには目が醒めた。フェルスタッペンが追突しなければ、ルーキー3戦目にして初優勝もあり得たのに、ずいぶん惜しいことをした。

    R4サンマリノ
    ラルフ初優勝、というのは、確かに去年のホッケンハイムよりかはドラマには欠けたものの、とにかくフェラーリは地元2戦のうち1戦を落としたわけで、残るモンツァもコースレイアウトからしてウイリアムズ優位だと考えられる以上、うかうかとはしていられないはずだ。しかし、リタイアした割には喜びすぎなんじゃねえのか兄ちゃんよ。

    R5スペイン
    呪われている、としか云いようがないほどミカはついてない。ついにハッキネン復活の逆襲勝利かと思いきや、久しぶりのどんでん返し。ミハエルが駆け寄るのをみて、ああ、またなんか云われるかな、この暴君、と思ったのは杞憂だったようだ。ミカファンは、あまりの脱力感にむしろフジTVの構成批判へと矛先を変えたらしい。 ファイナルラップの棚ぼたとはいえ、ファン・パブロの2位完走もめでたいことだ。ああ、BAR? そんなチームもあったねえ。

    R6オーストリア
    またしてもやってくれたかファン・パブロ。ってことで、押し出しちゃったらそりゃあなた、元も子もないですがな。これでデイビッドが逃げ切ったのだが、ルーベンスの追撃もどうも鈍いような気がしてならない。やっぱり永遠のセカンドでしかないのだろうか。そのセカンドの地位さえ危うい今シーズンだが。あのチームオーダーは、しかし、俺は絶対出るだろうと感じていたから、最終コーナーまでルーベンスが譲らなかったのは、彼としては抗議とか嫌がらせとかそんな子供じみた行動でなく、ぎりぎりまでデイビッドを追いかけるつもりだったんだろうと思っている。たぶんね。ミカは、しかし、ほんとどうなんだろう。

    R7モナコ
    モナコの主人公はなんといってもデイビッドだろう。モナコ初のPPをストールで棒に振り、アロウズの新人に半分以上封じ込まれ、それでも最後尾から5位に浮上してここまで全戦ポイント獲得したんだから、異論のあろうはずがない。奮戦入賞したアレジも、表彰台に登ったエディーも、人一倍頑張ったことは頑張ったが、F1サーカスモナコ巡業をいろんな意味で盛り上げたのはデイビッドだ。当然、1−2を決めたフェラーリだって、戦果はともかく、エンターテイナーとしては今回は前座みたいなものだ。それにしても、デイビッドの相方を務めたベルノルディに対して、マクラーレンチームのハゲとデブ、つまりロン・デニスとノルベルト・ハウグが恐喝に及んだってえのは穏やかでない。その言い分を聞く限り、どうやら彼らはF1サーカスを文字通りのサーカス(それも自分たちがメインイベンターであって、決してピエロは演りたくない)としか考えていないようで、レースについては八百長でも構わないらしい。落ち目のチームは身も精神も零落するものかと慨嘆を禁じ得ないが、まあ、このさいだからコンストラクターズランキングもウイリアムズ、ついでにザウバーにも譲ったらどうだ。

    R8カナダ
    カナダと云えばビルヌーブ、ビルヌーブと云えばファン・パブロとの喧嘩だが、こりゃあ、物事を冷静に考えられる人が見れば、ジャックのほうが分が悪いし、贔屓目にみたってどっちもどっちだ。たかだか口論で手をあげるとは大人げないとは思わないのだろうか。人殺し呼ばわりされてキレるキレないはガキの論法であって、じゃあなにか、NYでファックユーと叫んで撃たれても自業自得だと云うのか? どんな罵詈雑言であっても、銃を抜いたやつが悪いし、最初に暴力を振るった方がいつだって悪なのだ。でなければその境界は誰がどうやって引くと云うのか、巷のバカどもに聞いてみたい。暴力を振るうのは横着者のすることなのであり、所詮、ジャック擁護派はキレる危ない大人たちの予備軍にすぎないんだろう。予防線張ってるわけだね。ファン・パブロ、落ち目の元チャンピオンなんかに用はないと云わんばかり、さすがはコロンビア出身、とでも云おうか。あんたの態度は美しくないにしても爽快だよ。 そうそう、ラルフの勝ち方はフェラーリのお株を奪うやり方であって、これは痛快。

    R9ヨーロッパ
    ちちくりあい、ではなくちくりあい、が常となってしまった現代F1らしい1戦だった。そういえば一昨年のマレーシアでフェラーリを告発したのはマクラーレンだったっけか。そのときもフェラーリ有利に裁定が下ったが、今回もわずか半車身がラルフの追撃を止めてしまった。ここのところフェラーリばかり贔屓されるように見えるが、実際、そうなんだろう。でもそれが、20世紀いっぱいをかけてフェラーリが自らを自動車業界にアピールしてきた結果でないと、誰が云えようか。もちろんそんなことがレースに影響するのは確かにおもしろくないことだし、スタートに比して、なんとも歯切れの悪いチェッカーではあったけれども。

    R10フランス
    去年の鈴鹿をみるようなポール争いが、しかし靴屋の兄弟同士のことだったんだから、ドイツ人以外には面白くない展開だろう。またしてもスタートできないハッキネン。ここぞというときにポカをやってくれるデイビッド。筋書き通りならそろそろ反撃に移っていなけりゃならないマクラーレンも、もはやこれまでなのか。
    12番目のチーム、トヨタの活動がいよいよ本格化してくるなか、ホンダの成績はいまいちどころかまったくもってぱっとしない。聞くところによればエンジニアたちは燃費だのドライバビリティだのごたくを並べるばかりで、思い切った改良ができないようだ。よく云えばバランスをとっているわけだが、それって要するに臆病なだけだろ。これで来季、レース屋がくるま屋に負けようものなら、赤っ恥もいいところだ。ろくな結果も出せないくせに、日本中のF1関係マスコミがこぞってホンダホンダと合唱するのを見聞きするにつけ、頑張れトヨタ、日本を背負って立つのはあんたしかいねえ、と思ってしまう。

    R11イギリス
    ここはやはり、復活!とか反撃開始!とか書くものなんだろうが、しかし、遅い、遅かりし由良之介、だ。マクラーレンにとって、地元で勝利をあげるのは至上命題にも等しいわけだが、今年も面目は保ったってえことだな。

    R12ドイツ
    久しぶりの赤旗再スタート。それにしても、ほんと期待を裏切らないよね、今年のマクラーレンは。ミハエルが今日2度目のリタイアを喫したのを好機と、前戦に続き反撃ののろしを上げ続けるかと思いきや、あっと云う間にエンジンブロー。ホッケンハイムの森でラジオを耳にほくそ笑むミハエルを見て、人の不幸を喜ぶなって思ったデイビッドファンも多いはず。両者とも好きなわたくしとしてはどーでもいいことなんだけどさ。これでまたもプロストに並ぶ最多勝記録は次戦以降にお預け。

    R13ハンガリー
    過去17年間、第13戦目のGPに勝利したドライバーはチャンピオンになれないってジンクスがあった。去年はハッキネン(ベルギーGP)、一昨年はフレンツェン(イタリアGP)が勝利し、結果は既知の通りだ。しかし今年、2位以下に37ポイントのアドバンテージをもって乗り込んできたミハエルが優勝すると、その時点でチャンピオン確定(仮に残り全戦無得点でも、追撃者は最大46ポイントしか得点できないため、わずか1ポイント差でトップに手が届かない)、つまりこのジンクスが崩れることになるわけで、実際このドイツ人はそれを余裕でやってのけやがった。教授に並ぶ最多勝52勝、ドライバーズランキング1位、ついでにルーベンスが1−2フィニッシュを決めてコンストラクターズタイトルも掌中に収め、マクラーレンの夢は夏の暑さとともに潰え去る。さあ、あとはウィリアムズとザウバーがどこまで銀色のハゲデブ帝国を追いつめられるかだな。

    R14ベルギー
    ってゆうかさ、どこまでいくんだおまえは、兄ちゃんよ。史上最多勝利記録更新中。

    R15イタリア
    意外と細い神経してたのねミハエル。つうか細いから皇帝にのし上がれたんだろうけどさ、小動物みたいに怯える態度にはがっかりだ。王者の弱ったところをきっちり突いたコロンビア人の勝ち。参戦1年目の優勝だというに、当然と云わんばかりの態度にはほれぼれするね。

    R16アメリカ
    世界中がトチ狂った感じのある週末、ヒロイックとかトラジックとかパトリオティックとか、もう聞き飽きたよ。去年の仇を今年討つ。活動休止を宣言したミカがとりあえず2勝目を果たし、勝つ力が残ってることを証明したのはいいことだ。それに引き替えなんとも精彩に欠けるデイビッド。ほんと前戯だけな第3の男だねえ。そしてひたすら不運なルーベンス。これでランキング2位は絶望的。ああアメリカ。あのコースレイアウトもなんとかならんか。

    R17日本
    最終戦をきちんと優勝でまとめ上げる王者。今シーズンは結局レッド・エンペラー・オン・ステージに終始したような感がある。もうひとりの勇者アレジの全戦完走ならず。老兵は死なず、ただ去りゆくのみ。

    ESSAIへ戻る
    (C)2001 Takanashi Yoshitane.