F1観戦記:2002年シーズン


    さあて今年も暴言を吐いていきたい所存であります。なんか、あいだ空いちゃったけど。

    R1オーストラリア
    フェラーリ以外全員敗北に等しい開幕戦。去年のくるまですよ、そりゃすこうしは改良してるとはいえ、去年のくるまにPPも勝利も奪われて、どないやねん。そらまあ、オープニングラップでウィリアムズ恒例の追突空中浮遊ショーがあったとはいえ、さ。中団がごっそりいなくなってさみしいレースにはなっちまったものの、ウェバーとサロが盛り上げてくれてなにより。棚ぼたとはいえ、新参のチームが初戦入賞するってのはすごいことだと思うのだがどんなもんか。
    ところで今年タクマのレギュラードライバー登用とトヨタ参戦をてこに、日本でのF1を盛り上げていきたいフジTVの思惑が、オールドファンの逆鱗に触れたようで、あちこちで暴れてる連中を見かけた。しかし俺に云わせりゃ、ある物事(商品でも企業でもイベントでもなんでも)をだめにする最大の原因がオールドファンなんだよな。どうもやつらは前を見ることができなくて、すぐに過去の栄光、古き良き日を持ち出すんだ。こうゆうやつらの意見とゆうか身勝手な言いぐさを聞いた組織がどんな結末を迎えているかは、この1世紀を見渡しただけでも十分認識できるってえのに。見たくなきゃ見なきゃいいんだよ。新しいファンを獲得するためにやってることを、オールドファンが判断するのは間違っている。この手の判断は新しいファン(と、ファンに結局ならなかった人々)が下すものだ。オールドファンは黙ってついてゆくか、きっぱり手を切るこった。

    R2マレーシア
    フェラーリの庭のようなセパンサーキットだったが、ついにウィリアムズが壁を崩した。もとより接触による皇帝の脱落があったとはいえ、これはラルフとウィリアムズとミシュランの圧勝だろう。ルノーが見違えるようになったのも印象的。ジェンソンはやっぱり経験不足で、才能だけで走ってるんだと思う。速いマシンに乗れば速いし、遅いマシンでは遅い、ってのは当たり前のようだがそーゆうことだろう? この新生ルノーに完全に追いつかれた感のあるマクラーレン。モチベーション下がりまくりのスコットランド人と、若さ爆発中のフィンランド人がどこまで盛り返してくれるやら。そうそう、サトーは早くも同僚の釜掘っちゃいましたねえ。とりあえず謝り倒しておけ。
    しかしなんだかんだ云ってもヤツは最下位転落から3位浮上ですよ。どうゆう男だ、アレは。

    R3ブラジル
    8年連続リタイアですか。そりゃあ、もう、呪われてるとしか云いようがないねえ。ルーベンス、どおする。フェラーリ、ワンツー未だならず、新車投入のミハエルも優勝したとはいえ、ウィリアムズにけつを突っかれんばかりの接戦。って、実際突っつかれたんだけどね、いつものファン・パブロに。そして3強時代はどこへやら、あっと云う間に2強時代に戻ったはいいが、その2強からこぼれ落ちてしまったマクラーレン・メルセデス。かつて最強を誇ったメルセデスの皮を被ったイルモアエンジンも、今はBMWはもとよりフェラーリにも負け、トヨタにすら負けるんじゃないかという有様。いやあ、ミカはいいタイミングでリタイアしたよ。
    そしてもう一人のミカ(サロ)はまたしても入賞。3戦で2回入賞、前戦もマクニッシュが6位フィニッシュする機会が十分あったことを考えると、トヨタ、これはただものじゃあありません。まあ、金を湯水のように使ってんだから当たり前だとくさす輩もいなくはないが、それって要するに金の使いどころを心得ているっちゅうことだろ。世の中には金をけちろうとして逆に無駄金を使うばかもいるからさ。そんなばかの見本みたいな会社が日本からも参戦してたような気もするが、そろそろ日本人として恥ずかしくなるから、傷が広がらないうちにさっさと撤退しちまえと思うね。ああ、もうとっくにぼろぼろですか? こりゃ困ったねえ。まあ、これからはトヨタが日本のモータースポーツを世界にアピールしていく時代になるっつうことで。しっかしほんとにレース屋がくるま屋に負けるとは・・・

    R4サンマリノ
    前戦のカーチェイスに比べれば大変眠いレース。つうかほんと眠すぎ。だらしねえぞフェラーリ以外、どいつもこいつも。追撃先鋒のラルフも本気で抜く気があるのかどうか、それとも去年のカナダみたいにピットストップだけで抜くつもりだったのだろうか。しかしまあ、序盤戦で焦ってノーポイントになるよりも、6ポイントだろうがなんだろうが確実にゲットするというのは、実は極めて正しい戦略判断なのだな。マスコミやオールドF1オタクたちはすぐにファイトやバトルを求めるけれど、そういう手合いに限ってばくちでサラ金地獄に陥ること請け合いだ。メンツだけで勝負事はできないってことを、あほうな外野は忘れている。うん、結局ピットストップでは逆にルーベンスに抜かれて後退しちまったわけだが、それが今年のウィリアムズなのかもね。いかん、こんなことでは夏前にチャンピオンシップが終わってしまうではないか。トヨタはこれからが正念場だろう。ドライバーはもとよりエンジンも悪くないから、まずシャシーを熟成するのが先決か。

    R5スペイン
    序盤、次々に脱落する上位陣のせいか、あるいはそれをことさら強調する実況のせいか、荒れたかな、と思いきや、実はすんげえ眠いレース。しかも終わってみればミハエルの完全試合。表彰台は今の勢力分布図か、あるいはルノーが潰れたおかげとも云えなくもない銀色のそれは最後の輝きか。しかくいの頑張れ。ザウバーの2人は相変わらず元気だ。そしてこの辺りを見る限り、ブリジストンタイヤがフェラーリ寄りすぎってのは当たらないだろう。どこかの2チームばかりがダメすぎるせいだね。そしておめでとうハインツ。ジョーダンを離れたのは正解だったかもね。コスワースエンジンも本家より速いようだし。さあ、これで唯一ノーポイント・コンストラクター勢、某ワークス弱虫連合はこの先どう出るのか。ジャックが今回もなんとか7位につけてみたが、あと一歩が踏み出せない。そして残り3台は恒例の全滅。ほんと恥ずかしいから何とかしてください(笑い。わらしべ貧者と云えなくもないジャンカルロを筆頭に、ドライバーたちがかわいそうだよ。

    R6オーストリア
    鉄血の集団になっちまいましたスクーデリア・フェラーリ。イタリアっぽくないよね、ドイツだよ。あっ、でもファシストの伝統があったか。てゆうかローマの昔から個人より集団(血族)を重んじる国民性だったけどね、イタリアってば。いずれにしろ全体主義フェラーリ、良くも悪くも完璧なプロ集団であることをまざまざと見せつけたわけで、ドライバーを平等に扱うだのジョイントナンバーワンだの甘ったれたことをぬかしてるチームは、びっくりして非難するしか能がなかったようだ。口を動かしている暇があったら手を動かしてもっと早いくるま作れよ。トップを自分たちの低いレベルまで引きずり降ろしてレースを面白くさせるってえのはいかがなものか。とまれトッドのコメントはいっつも人を小馬鹿にしてて気持ちよい。人生、敵がいなきゃちっとも面白くありませんからな。バーニー御大がなにやら不穏なことを口にしているようだが・・・つうか、去年と同じ? そりゃまあオーストリア人怒るわな。
    さて、タクマが貰い事故で一時容態不明に陥る中、ジャンカルロはよく奮闘した。これでホンダとジョーダンに貴重な2ポイントを進呈したわけで、開幕戦にうまくポイントを手に入れたミナルディと並ぶことになった。やっと恥を自覚したのか、残りBARが入賞すればとりあえず窮地は脱するね。トヨタはそろそろ定位置確保か?

    R7モナコ
    ちょっと無駄なミスが多いように見受けられるここんとこのタクマ。正念場かね。でもそろそろ折り返し地点だし、のんきなことは云ってられない。ジャンカルロはベテランの意地を見せてさらに2ポイント追加。トヨタはいい線行ってたが、今ひとつ練り込みが足りないかも。ええ、もう一つのチームはニュースにすらならんようで、落ち目の女優みたいなもん。脱げば(醜聞あれば)ちっとは耳目をひくかもね、てとこ。
    しかくいのは昨年の借りを返して溜飲を下げたか。なにしろ去年は最低な決勝だったからね。今年も途中で煙ふいてどーなるかと思ったがよくやった。しかし敗北宣言はいただけない。やる気なくすってばさ。あごは隔年でしか勝てないかな。そうしてやっと完走したラルフ。表彰台下にヤルノ、ジャンカルロ、ハインツと、なんだかんだ云っても最後はベテランが上位を占めるのがモナコの特徴。

    R8カナダ
    サーキットの特性上今年もウィリアムズ優勢かと思いきや、白煙を上げる2台。去年の勢いはもはやないのか。バリチェロはここでもデイビッドを抜けなかった。ジャンカルロ3戦連続入賞。対するタクマはようやく完走したとはいうものの、どうも調子出ないようだ。

    R9ヨーロッパ
    まあ、誰もが書いてるし、思ってることだけど、今回はオーダーが出なかった。最後の数ラップ、TVクルーも含めて全ての関心はそこにあったわけだが、結果はルーベンス・ミハエルのワン・ツー。フェラーリは改心したのか? そんなわけはあるまい。なかには周囲を気にせず今回もオーダー発動すればいっそ潔い、なんて声も聞かれたが、それは勝利の哲学に反する。オーストリアGPの裁定が未決という微妙な時期にあって、委員会の感情を逆撫でするような挙動は絶対に避けなければならない。であればこそ、ルーベンスがオープニングラップを1位で通過し、その後も快走を続ける状況下、彼らフェラーリはミハエルを戦術的に敗北(2位だけど・・・)させることで戦略的に勝つという賢さを見せたわけだ。チャンピオンシップは1GPで戦われるわけではなく、17戦を戦い抜くことで決着する。去年のイタリアGPでバーニーはミハエルに警告しなかったか? 鈴鹿の表彰台が確定するまで、チャンピオンは決定しないのだ。

    R10イギリス
    雨のシルバーストン。無敵フェラーリ。ほかになにを云えばいい。フォーメーションラップでエンスト、スタート最後尾のルーベンスですら、結果2位。ああ、BARアベック入賞という快挙があったな。でも、それすら霞んでしまいそうな週末だ。

    R11フランス
    フォーメーションラップでルーベンスが発進できなかったのを見て、これで終わった、と思った人は多いはずだ。あれは巧妙なオーダーだったのか? ミハエル王座獲得の障碍の一角が崩れ、残る対抗馬ファン=パブロに期待をかけようにも、ウィリアムズの調子は一向によくない。スペイン以降、2位にすら入っていないのだ。案の定、白いマシンはまともな戦いもできず、フェラーリ以外は重苦しい雰囲気が立ちこめるなか、ミハエルが白線を踏むという失態をやらかした。一躍トップに躍り出たライコネン。素がいいのだろう、マシンさえ決まれば速さを見せるのはハッキネンの後継者たるにふさわしい。でもね、いったん傾きかけた天秤はそう簡単に戻らないんだな。やはりバリチェロがスタートできなかった時点で全ては終わっていたわけだ。ラスト5周のまさかのオーバーラン。立ち上がりを追い抜くシューマッハ。皇帝の恐ろしいところは、どんなときでもちゃんと前の状況――マシンにしろ路面にしろ――を把握して最良の決断を下せるってことだ。史上最速の王座確定。ミシュランとしては最悪の一日だったか。

    R12ドイツ
    英雄はなかなか母国GPで勝利できない。マンセルもセナもキャリアの終盤だった。それはまさに凱旋勝利にふさわしく、初ポール、フェラーリ初勝利のミハエルも、とすればこれからが下り坂なのか。であれば今後のレースも面白くなるだろうが、こいつだけはそんなこたあなさそうだしなあ。

    R13ハンガリー
    はい、コンストラクターズ・チャンピオンシップも確定してしまいました。眠くなるようなフェラーリズ・ショウ。1周を除いて76周1位、ポール・トゥ・フィニッシュのルーベンスと皇帝のパフォーマンス。あまつさえミハエルは最速ラップ更新ごっこに興じ、もはや無敵とかなんだとか云ってるばやいではない。

    R14ベルギー
    ここでミハエルがポール・トゥ・ウィンを決めるのはいつものことだから、そのほかのことに注目してみよう。つったって、オー・ルージュでばりばりエンジン爆発させてた連中の記憶しかねえけどよ。2位バリチェロと3位以下との差が17秒。問題あるだろ、いくらなんでも。近年、ここまで速いことが誹謗中傷の的となったことがあったろうか。もはや誰もがフェラーリ以外のチームの遅いことよりも、赤いマシンの速すぎることに愚痴をこぼし、まるでフェラーリが遅くなればF1も面白くなって人気が出る、といわんばかりだ。速いって、罪なのか。

    R15イタリア
    カナダ以来、フェラーリの、フェラーリによる、フェラーリのための祭典であったF1が、ちょっとだけ変わった。つまり、フェラーリの、フェラーリによる、「ティフォシ」のための祭典になったのだ。笑いごっちゃない。悲しいけど、これ、戦争なのよね。って戦争じゃないけどさ。こうゆうときに出てくるのは皇弟ラルフではなく闘士ファン=パブロでもない、憎まれ口エディーだったりする。彼の凄いところは、いつぞやのたなぼたBARとは違って、ちゃんと予選5番手から機会を逸せず、きちんと表彰台に登ったってとこ。口先だけじゃなくって、やるときゃ(テストも含めて)やる。こうゆうのがホントのベテランさね。

    R16アメリカ
    やりすぎ、ってのはあるだろう。同時ゴールを画策する皇帝と、ちょっと行き過ぎちゃった侍従長(って云ったら怒られるのか)。序盤早くもモントーヤの優勝が絶望的になって、ルーベンスのランキング2位が確定したとはいえ、ここまで遊ぶ余裕を見せる赤い帝国のやりたい放題。確かに少しはモラルを問うてもいいかもしれないけれど、後続があんまり遅すぎて、他チームのどんな批判も単なる泣き言にしか聞こえないんだから、もうなにもいうこたないやな。表彰台のF1-2002が今年のすべてを物語るようで、シャンパンをぶっかけるデイビッドが「ぜんぶこいつが悪いんだ!」と云ってるように見えて泣けてくる。

    R17日本
    フェラーリ・ショウを見せつけられるのは覚悟してたし、ホンダ花火(ブロー)が上がるのも予期してた。オーバーテイクもない、リザルトは予選グリッドからリタイア分を差し引いたまんま、秋の陽射しが目映いばかりの最終戦は、まあ、旧枢軸国国民(フィンランドも枢軸)以外にとっては、稀にみるほどつまんないレースだったに違いない。日本人たって、タクマがファン=パブロを抜くことよりも、ホンダエンジンが壊れないことを祈るってゆう、なんだか情けない状況だ。記者会見ではミハエルがリップサービスを送るし、ありゃ観客が自身の記録的優勝よりも地元選手の入賞ばっかり喜んでたのを明らかに意識してたね。そういや全戦完走どころか表彰台だもんなこの男。
    今年からほとんど自由席になったヘアピンで見ていて気づいたのは、ミハエルのレーシングラインが人とはちょっと違うこと。彼だけCPをかなり奥に取っている。上位グループのなかでは、ほとんどタイヤスモーク上げてなかったのも印象に残ったね。立ち上がりのフェラーリエンジンが、他を圧倒してひときわ重低音を轟かせていたこともだ。それともあれはTCSの作動音? なんにしてもあの音だけで、フェラーリひとり別次元に突入してるような感覚を受けた。そんな1年だ。

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    (C)2002 Takanashi_Yoshitane.