F1観戦記:2003年シーズン


    去年上げ忘れました。

    R1オーストラリア
    のっけからフェラーリ・ミハエルの連続表彰台記録が途絶えた今シーズン。大変更になった予選のせいではないのは明らか。そして90年以降、データ上では開幕戦勝者がチャンピオンシップを制する確率が非常に高いのだが、今年はどうなるか。でもデイビッド、97年の開幕戦勝者でもあるんだよな。そんでもってその年はジャックがチャンピオンになったんだっけ。なにはともあれマクラーレンの旧車が意外と速いのに吃驚する。つうかなんで去年遅かったんだ? ちょろっといじれば速くなるのか? それってレギュレーションのせいちゃうやろ? 去年のフェラーリ専制を許したA級戦犯は、やっぱウイリアムズじゃなくてマクラーレンだな。
    それから開幕時期のおなじみな話題といえば、フジの地上波。よくまあ毎年毎年非難浴びつつ放送し続けるもんだ。おれが編成ならさっさと地上波切ってCSオンリーにして、愚かなF1オタクどもを嘲ってやるのだが、さすがにスポンサー様がいるからそうもいかんか。でも確かに今年のキャスティングはこのおれでもぐったりする。それというのもまたぞろ妙なタレントを投入したことに対してではなく、ベテラン解説陣がCSいっちまったこと。彼らさえいれば、あとは実況がカスだろうが解説がボケだろうが気にならないんだけれども。川井ちゃん? 情報はありがたいけど、正直こいつは要らない。カンに障る喋り方すんのよね、彼。典型的なオタクの喋り方。実際問題ただの情報屋でしかないんだから、字幕&メモ用紙で十分だ。フジも彼一人に頼ってないで、ほかのピットリポーター育てろよ。

    R2マレーシア
    すまん。ほんっとうに記憶がないんだ。ちゃんと観たのかどうかすらも怪しい。キミ初優勝だったっけ?

    R3ブラジル
    9年連続リタイア、そしてフェラーリ連続完走記録の終焉。
    不謹慎と言われようが野蛮と罵られようが、派手なクラッシュもレースの華であることは間違いない。宙を舞うホイール、回転するシャシー。飛び交う怒号、引き裂く悲鳴。その瞬間、からだの中でアドレナリンがかあっと噴出するのが判りませんか? あれは人間のプリミティブな反応であって、それを理性で抑えるのは勝手だが、厳然たる事実として認識しろよな。え、それはおれが江戸っ子気質だからか? クラッシュとオーバーテイクはレースの華。リスクを負うからこそ勝負は美しく、価値あるものとなる。愚かで脆弱な文明人には成り下がりたくないものだ。安全でがちがちのぬるいレースが観たいやつはゲームでもやってろ。
    すったもんだのあげく、ジャンカルロが初優勝。おめでたいんだか拍子抜けなんだか。レース中断時刻の基準が、スチュワードが決定した時間なのか、赤旗を振った時間なのかはっきりさせないから余計な混乱を招くわけであって、ふつうどう考えても前者なんだから、その時の記録時間でラップリーダーの走行周回を確認すればいいだけのこと。それ以前にあの雨でSC入れない状況判断もどうかと思うけどな。

    R4サンマリノ
    重苦しい雰囲気だったのは放送のせいか、それともサーキットもそうだったのか。一昨年のイタリアGPと同じような沈鬱さが漂うサンマリノ、アイルトンのメモリアルレースという下拵えがあるとはいえ、シューマッハというたった2人のドライバーに関わるごく私的な案件が、ニューヨークの事件と同じだけの緊迫感をもってこの週末の空気を支配できるのだから、さすがは皇帝というほかない。んで、PP、FL、WINと3拍子揃えてライバルを圧倒するなんざ、2000年のイタリアGP並みによくできたストーリーだ。またバーニーがなんかスイッチ押したのか?

    R5スペイン
    ようやく投入されたフェラーリの新車。海外3連戦の3連敗で尻に火がついたマラネロが、サンマリノの勝利でなんとかメンツを保って旧車を引っ込めることができたわけ。歴史ある民族ほどメンツにこだわるからね。ただこの新車、美しいことは美しいが圧倒的な速さを見せたわけじゃないのが、まだ見えてこないマクラーレンの新車に対する不安要素。この週末、ほんとにノートラブルだったのかもわかんないしね。
    トヨタがようやく無得点から脱出、例によってミナルディだけが取り残された。大先輩のオリビエをさしおいて、旧レギュレーションでも入賞圏の6位にルーキー、クリスチアーノが入ったのはすばらしい。そんでもって一昨年のファン・パブロ以上にアグレッシブな今年の殊勲者アロンソ、生き急いでるような気がしないでもないくらいに序盤は波乱含みだ。それにしても今年のウイリアムズは沈んじゃったねえ。この週末を見る限り、見た目はまだまだ元気だけど。

    R6オーストリア
    皇帝が去年の借りをようやく返したオーストリア。でも一昨年の借りはまだだな。来シーズンこのGPがあるかどうかわかんねえけど。

    R7モナコ
    2003GAの優位性に対する疑問符が早くも確信に変わりつつある。まったくといっていいほど冴えがない。あるいは昨年のワンマンショーで腕が鈍ったドライバー自身、つまりミハエル&ルーベンスらの衰えに由来する成績の悪さか。終盤ミハエルが追いついたのはもちろんノーミスでアタックし続けた結果でもあろうが、ファン・パブロがペースを落とした結果でもある。安定してミスをしないのはさすがだけれども。BSタイヤの性能問題も囁かれ、早くも供給先との軋みが聞こえてくれるなか、老獪なピエール爺さんに祝杯をあげさせるだけなのだろうか。モナコ最多勝の座を「ミハエルごときに」明け渡さずにすんでほっとしているセナ吉害が多いのにがっかりする。まだまだファンの成熟は遠いようだ。

    R8カナダ
    なんつーかここんところ暴言を吐くネタがなくて面白くない。レースは緊迫しているようでその実単調だし、F1オタクどもはとうに呆れ返ってかおとなしい。せっかくだからカナダにちなんでジャックをこき下ろそうと思ったものの、もうなんかこのハゲもこのごろただの道化でしかなくて、おまけにホンダは(トヨタほどではないにしろ)ダメダメで目も当てられず、そろそろ憐憫の情も湧いてこようかっつうところ。ところでどうしたファン・パブロ。そんなとこでスピンするなんて。

    R9ヨーロッパ
    あれはアリなのか? ほんとうにアリなのか? 誰もがそればかり気になったはずだ。珍しく近藤だけがこの点をついていたが、逆に近藤だけが繰り返していたってことは、もしかして実は大したこたないってことなのか? キミのエンジンブローでジモティが喝采を上げるのもつかの間、ファン・パブロの豪快な切り込みでくるっと回ったお兄上。そうだよ、ドイツなんだよここ、ヨーロッパGPなんてごまかしてるけど。オフィシャルもドイツ人なんだよな。あとで聞く話によると、危険回避目的の押し戻しはアリなんだそうだが、オフィシャルの判断により、ってとこがミソだな。だって、これがもし「コロンビア」GPだったりしたら、有無を云わさずお兄君はクレーン移動させられてるだろう。
    ところで無限脱税。人を見かけで判断してはいけないと一度は教育されるのだが、その実心理学的にみても見かけほど人柄を反映するものはない。これはきっと禁断の果実ゆえに隠匿されてる人生の真理なわけであるな。なるほど本田社長、見るからにエセっぽいと思っていたが、脱税ですか。部下が独断でやったことだと抗弁しているようだが、本当にそうだとしても犯罪をしでかすような部下を雇い入れたその責任はお前にないのかと云いたい。ホンダファンは必死になって宗一郎の息子を(希望的にも)擁護するが、限りなく黒に近いグレーにしか見えんがねえ。ああ、数学的には「限りなく近い」は「等しい」の謂いだっけ? あとはホンダグループのスポーツ活動に影響出るかどうかというところだが、まあ影響ないわきゃねえわな。ニュースはひたすら「F1の無限」と連呼してるし、大体「無限」なんて名称だけじゃわけのわからん会社(無限がなんの会社か知ってるのはモータースポーツオタクだけなんだってばさ)を説明するのにホンダとF1は実に適切な単語である以上、これでホンダのイメージは低下、いくつかのスポンサーは検討を迫られるだろう。あーあ、ばか息子のおかげで日本のイメージも台無しだあ。

    R10フランス
    ミシュラン母国でウイリアムズ1・2フィニッシュ。かろうじて皇帝3位。序盤散々叩かれていたウイリアムズの反撃開始となるか。

    R11イギリス
    コース上になにか乱入するとルーベンスの出番ですな。ま、それはそれとて、きっちりオーバーテイクして1位をもぎ取ったんだからさすが。おまけに敵地でね。キミはまたしても若さが出たかな。

    R12ドイツ
    久々のスタートクラッシュ。つうかキミ飛びすぎ。あれで支障ないわけがない。ラルフ、ルーベンスと消えてファン=パブロとミハエルのサシ勝負かと思いきや、コロンビア人速い速い。ドイツ人真っ青。終盤ヘアピンでオーバーテイクを決めるも、たぶんそれが原因でスローパンクチャの皇帝なすすべもなし。それでも7位に踏みとどまれたのは大きいだろう。

    R13ハンガリー
    来ると思っていたよ、フェルナンド。F1優勝史上最年少記録更新だってな。ちょっとカオ濃いけど。それとルノーのパッケージはスバラシイ。ウイリアムズもマクラーレンも、ほんと何をしてるのか。ところで魔の第13戦勝利者はアロンソということで、ほぼ確実に今年もジンクスは守られるみたいだ。

    R14イタリア
    2000年と同じような展開になってきました。ラスト3戦で反攻をかけるマラネロ一家。ファン=パブロがなんとか2位に割って入ったものの、ポイント差は結構崖っぷち。
    ところでGPウィークが終わってからの騒動といったら。テクニカルディレクターという人種はレギュレーションを守るためではなく、抜け道を探すために存在するのだということに何人が気づいているのか。なにも彼らはレギュレーションを破ろうとしているのではない。そんなことをすればF1という「遊びの場」から放逐されるのは判りきっている。レギュレーションというのはルールであり、ルールとは即ち契約だ。西洋人にとって契約とは考え得るあらゆる状況への対応手段を列挙し、もって当該の契約が規定する場の運用を円滑ならしめるものである。逆に言うと契約に記述されていない(縛られていない)ことは何をしても正当なのである。
    だからミシュランが本戦終了時点で、使用後のトレッド幅が規定サイズを超えるタイヤを用意していたとしても、なんら驚くにはあたらない。タイヤのテクニカルルールには確かに「〜mmを超えてはならない」とあるが、「いついかなるときも」とは書いていない。そして検査は使用前だけだったのだ。これは解釈と運用の問題とも云えるだろうが、そもそも解釈が多岐にわたるような契約(ルール)の設定自体に問題があり、ルールにいくつかの解釈が可能であれば、参加者は常に自らに有利な解釈を採るものなのだ。だからはこれはミシュランが狡猾なわけではないし、ブリヂストンが愚直なわけでもない。多くの人が直感的に非難したように、FIAの失態なのである。でもこのシーズンもミソついちゃったね。

    R15アメリカ
    で、ファン=パブロ脱落。キミが食らいついて僅かに望みを残す。
    その一方でいよいよ進退谷まってきた某チャンプだが、彼の置かれた立場に関するサー・フランクの今回の発言は、これまで彼が主張してきたことをジャックをダシにして言い直しただけのことにすぎない。要はドライバーではなくマシンの性能こそがすべてというわけだ。ミナルディで鳴かず飛ばずだったジェネがウイリアムズBMWを駆ってモンツァで5位入賞したことも、彼の主張を裏付ける一因となっただろう。
    ウイリアムズで選手権を制覇した元チャンピオンのその後のF1人生が、大概ろくなことになっていないような気がするのははたして偶然なのか。サー・フランクの好むファイタータイプのドライバーとは、つまり与えられた最高のマシンを自在に操って、動物のように勝利を目指す脳味噌筋肉のドライバーのことなのではないか。だから天狗になったり、知恵の付いたパイロットをいとも簡単にクビにする。あのチームに必要なのはマシンを速く走らせるドライバーではなく、マシンが速いことを証明するドライバーなのだ。だからいつの日かウイリアムズチームは、最強のマシンに猿を乗せてドライバーズタイトルを獲得するだろう。そのときがF1の終焉となるはずだ。

    R16日本
    わはは、とうとう逃げだしやがった、あの癇癪持ち。おかげでタクマが出走できてこちとら嬉しい限りなんだが、裏を返すとこれで人気ベテランドライバー追い出すの2人目ということになるから、いよいよもって結果出さないと辛いよね。しっかしなんつーかここまで見下げ果てた奴だとは思わなかったよ元チャンピオン。走れる精神状態にないだと、甘えてんじゃねえやてめえプロフェッショナル違うのか。アマチュアの風上にすらおけねえベイビイだ。その理由ってのもニューヨークの事件とか肉親の不幸とかじゃねえんだ。誰のせいでチーム内の雰囲気悪くなってると思うんだ? 親父が偉大だっただけに息子のばかさ加減が際だっていたしかたありません。そのばか息子がやたら敵視していた皇帝も凋落激しかった。抜きあぐねた上に釜掘って自滅するし、なんとか自力チャンプは獲得できたようだが、精彩はまるで欠いていたね。逆にルーベンス大活躍。ここでも証明された真理、すなわちチャンピオンシップは2人のドライバーによって勝ち取られる真理を、サー・フランクはちゃんと理解しているのか。理解して争わせてる(あるいは放置してる)んなら別にいいけど。

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    (C)2003 Takanashi_Yoshitane.