ESSAI
depuis le 21 septembre 1998

    アナベル・リイ

    ポオ
    昔むかしそのまたむかし
    海のほとりの王国に
    その名もアナベル・リイと云ふ
    ひとりのをとめが住んでゐた
    わたしと愛しまた睦みあう
    その念(おも)ひだけと生きてゐた
    
    わたしも彼女もまだ稚(いと)けなく
    海のほとりのこのくにで
    愛より深く愛しあってゐた
    わたしとアナベル・リイともに
    つばさもちたる天のうへの
    化人(けにん)もうらやむ愛をもて
    
    これがためにはるかなむかし
    海のほとりのこのくにで
    わが美(うる)はしのアナベル・リイは
    雲間の風に凍えはて
    かくて貴(あて)なるはらからどもが
    わたしのもとより連れ去りぬ
    岩の室屋(むろや)にとじこめんとて
    海のほとりのこのくにの
    
    天使らなかばも愉しむことなく
    わたしと彼女とをそねむ
    これぞわけなり(人もみな知る
    海のほとりのこのくにの)
    夜半(よは)のむらくも風たちさわぎ
    あへなくなりしかアナベル・リイ
    
    なれど二人の愛はかたくて
    齢かさねたひとよりも
    さらに賢(さか)しきひとよりも
    されば天なるものどもとても
    海の底なるおにとても
    遠ざけ得まじわたしのこころを
    アナベル・リイのこころより
    
    月のあかりに入(い)るは夢路か
    アナベル・リイの美はしき
    星のきららにひとみぞ偲ぶ
    アナベル・リイの美はしき
    こひし愛ほしわがつますべてよ
    されば夜どほしわたしは身をよす
    海のほとりのいわむろに
    海のほとりのおくつきに
    

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