ESSAI
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とらドラ!(アニメ版)

原作:竹宮ゆゆこ。放送:2008〜2009年

最近はほとんどアニメを観ないのだけれど、コミックスの4巻を読んだら突然観たくなったので、いまさら感想文。ちなみに原作未読なので、アニメから読みとれるところまで。

2012.3.31補 BD-BOX新作感想追加

#1:虎と竜

冒頭の2羽のスズメ、そしてモノローグ。「だからこそ世界はそれを隠したのだ、そう簡単に手に入れられないないように。〜そういうふうに、できている。」から典型的な青い鳥物語構造が見えてくる。でもラブストーリーなんだからそれでいい。

竜児の目つき悪い=ヤンキー誤解と大河の手乗りタイガー設定の描写はまあまあ。2人の想い人であるみのりと北村の妙なテンションの描写のほうが冴えているし、主人公2人は怖いと云うよりも恋愛沙汰についてヘタレっぽいところが強調されている。

#2:竜児と大河

いつの間にか大河は竜児に気を許してる感じの描写。恋愛関係にないからこその気安さなのか、家庭環境のせいで家族っぽいものに惹かれてるからなのか。竜児も世話焼き女房タイプだし。ぐじぐじ悩んで電柱に八つ当たりするところは子供っぽくてむしろほのぼのする。

大河が竜児との主従関係を清算してBパート冒頭の電線にスズメがいないのが象徴的。ちなみにアバン冒頭では2羽止まっている。

北村への告白時に竜児への自覚しない想いをぶちまけてしまう大河はドジと云うかなんと云うか。ちょっとドキッとしてる竜児もなんだか。よく判らないけどそばにいてやりたい、てのは性格のせいもあるだろうし、恋愛感情とは違う家族感情のようなものの芽生えでもあるだろう。竜虎並び立つ宣言(2連の飛行機雲というベタな表現付き)はよくよく考えればプロポーズみたいなもんだ。もちろんお互いにそうとは気付いていないけれども、思わず涙を浮かべた大河は少なくともそこに優しさを感じたのだと思う。キックと暴言は照れ隠し以外の何ものでもないことは、「大河、だって」と云う呟きに表れている。

#3:君の歌

今風に云うと竜児のターン。大河に負けず劣らずみのりの前では舞い上がる竜児が描かれると同時に、みのりの妙なテンションの明るさがどこから来ているのかを垣間見せる。好きな子のことは俺だけが判るんだって思い込みはキモイ、などと大河は貶すが、少なくとも竜児はみのりのことを理解しようと努力しているように見える。

それにしても高校生にもなって自転車に乗れない大河っていったい。それを去年はよく観察してたって北村はなにかあったのか。

#4:あのときの顔

2話と3話の北村の言動の理由が明かされる回な訳だけど、大河がびっくりして断っちゃったって云うのは判らない訳でもない。と云うか理由はどうあれ重度の寂しがりやだった訳で、真正面から踏み込まれるのに慣れてなかったと云うことだろうか。そこにある種の優しさを感じて、恋が芽生えてしまったと。

北村が平然と接していられるのは、前半の生徒会長とのやり取りを見る限り、この会長に惚れているからだろうし、2話のテンパった告白で大河の竜児への隠れた想いに気付いているからなのだろう。

顛末を聞いて頭を抱える竜児に飛び蹴りを食らわす大河の照れ隠しっぷりが相変わらずだが、そんな話をしてしまうほど彼女は竜児に気を許してる。だいいち1人暮らしで合鍵持たせてるって、どんだけ無条件に信用してるんだ。

#5:かわしまあみ

ここから第3勢力あーみんが登場。腹黒キャラと云うよりは裏表の激しいわがままキャラと云った感じの描写。大河はさすがに女の子同士だからか、あーみんが裏を見せる前からそれに気付いてたようだ。でもそれって自分も同じようなものだからなのではないか。北村が絡むととにかくヘタレになる大河の可愛らしさも相変わらず。

#6:ほんとの自分

ストーカー騒動をきっかけにあーみんの隠れた内面が描かれる。どうやら彼女も大河同様、自分のことを判ってくれる人が欲しかったみたい。そしてそれが竜児だったもんだから事態は愈々ややこしくなる。大河の北村へのパターンと云い、突っ張ってた女の子が優しさに触れて参っちゃうのは王道なのか。王道だろうな。

#7:プールびらき

足は結構速かった(2話3話)のに泳げないわ自転車乗れないわ極端な感じの大河、ああそう云えばドジ属性なんだったっけ。あるいは教えてすら貰えないほどに家庭環境が崩壊してたってことか。

あーみんに迫られた(ように見える)ところを目撃されて言い訳する竜児に当たる大河は、どう見たって嫉妬ですが、言い訳しちゃう竜児も竜児だよな。で、結局それが嫉妬であったことは水着を改造してる時にこぼれた大河のセリフからなんとなく想像できる訳で、もちろん嫉妬と云っても恋愛感情に由来するものではないだろうけれど。

貧乳コンプレックスは去年はなかったらしいので、やはり北村に恋し始めてから気にするようになったのか。カップ増量をもちかける竜児にまったく照れがないところをみると、もう完全に保護者モード。もっとも水着姿にドキッとはしてるようだ。むしろナインペタンな水着姿を竜児に見せても照れる訳じゃない大河の方が、被保護者モードか。

#8:だれのため

特訓シーンのBGMがトップぽかった。のはどーでもいいとして、確かにあーみんの云う通りこの頃から焼きもちタイガーの描写がかわいくなってきた。もちろん本人はそれが焼きもちだって気付いてないだろうし、竜児も認めてない。

誰のためにくだらない、おまけに勝ち目のない勝負に頑張ろうとしてるのか、口に出せない上に当人が気付いてもくれないので、結局ブチ切れ。

にも拘らずお弁当やら気を使ってくれる竜児のために勝負に出たところでアクシデント発生だからもうたまらない。衆人環視のなかどう聞いたって恋人宣言でしかない号泣をかますわけだが、後日けろっと取り繕ってしまうあたり、まだまだ自覚できてない、つかしたくないのか。北村とみのりはプールサイドで微笑ましく見てたようだけど、あーみんは、このお子様が、というくらいの気分なんだろう。

#9:海に行こうと君は

一緒にいてドキドキするのが恋、当たり前のようになんとも思わないのは無関心なのではなく、ある種の信頼だろう。竜児はそれに気付いてないようだが、夜更けの食事のあとに冒頭の悪夢を「意外と〜」と云いかけた大河、うすぼんやりと「家族」のようなものを想像したのかも。

みのりは肝心なとこをはぐらかす癖がある感じ。自分で幽霊のたとえ話を振っとき乍ら、竜児のセリフの裏に気付いているのかどうか。恋に恋してるとでも云うべきか。それは竜児も大河も同じことなのだが。

#10:花火

驚かそうとしてた方が驚かされる、のは定番として、その流れであーみんが竜児に想いをぶつけてみる。だけど彼女も肝心なところで寸止めしたりぼかしたりするから、恋心はみのりに、親心は大河に向いてる竜児にはまるで通じない。8話からの流れでも2人のココロの内が一番良く把握できてるっぽいあーみんなのだから、ズバリ云ってしまえばいろいろ収まると思うけれど、そうしないのは物語展開上の要請、と云うとつまらないので、やはり彼女も不器用なんだなと。

帰り際に竜児の背中を見て物悲しそうな表情をする大河、微妙な感情の揺れ動きが出てきてる。その前のシーン、打ち上げ花火を見ている竜児とみのりの姿を寂しそうに見た大河が、手許の線香花火に視線を落とすと同時に花火が落ちる演出も同様。

#11:大橋高校文化祭【前編】

新学期が始まって文化祭の準備。そこに大河の父親が絡んできて、物語はただの恋愛模様から家族の姿をも描くようになる。

大河が父親を気嫌いする理由はよく判らないし、捨てたのはどっちかも判らない。事情はどうあれ一方的に父親を悪し様に扱っているように見える大河に、自分の家庭環境を重ね合わせて珍しく本気で怒る竜児の姿から、彼女だけでなく彼も家族に特別な思いを抱いていることが垣間見える。

竜児の言葉を遮って「でもあんたが云うから、そう思うことにする」と父親の元に向かう大河。それはすなわち彼女が自分の気持ちではなく、竜児の気持ちを選んだ証であり、紛れもなく彼女が竜児に見せる優しさであろう。不幸にして竜児はそれに気付かない。自分の父への思いを押し付けてしまったとは気付いていても。

#12:大橋高校文化祭【中編】

大河の父親の本性を知っているらしいみのりと、上辺しか見ていない(と思われる)竜児の衝突。竜児は家族のことが絡むと思い込みから来る弱さを見せてしまうようだ。大河のためと云い乍らそれは自分のできないこと、得られなかったことを人に託しているに過ぎない弱さを。3話で大河は云ってなかったか、好きな子のことは自分が一番判ってやれるって思い込みはキモイと。もちろん竜児は大河が好きって訳じゃないけれど、それでも自分が好きなみのりと喧嘩してしまうくらい、大河が大事だってことだろう。

「間違ってるとか間違ってないとかじゃないの、そんなことより大切なことってあるから。だから謝るとか許すとか、そうゆうのが必要になって来るの」と云う大河のセリフは、竜児を諭すだけでなく自分に云い聞かせている部分もあるだろう。だが彼女のその(父へ向ける)気持ちは報われそうにない。

あーみんはなにか吹っ切れたのか、竜児にちょっかいかけるよりも、少し離れたところで見守るかのような勢いに。

#13:大橋高校文化祭【後編】

結局大河の父親は身勝手なオトコだったってことで。それに気付いてやれなかった竜児だが、ミスコンで全校の祝福を受けているかに見える大河の姿に彼女の孤独を見出すことはできた。そんな彼女のそばにいてやれるのは誰か、そばにいると誓ったのは誰だったか。福男レースでみのりとともにゴールする竜児の姿に、みのりへの、大河への謝罪の気持ちが表れていようか。

ティアラの件でみのりが高須くんもだよと云った時に全力で否定する大河は、北村への恋心とは別に竜児への特別な感情が芽生えて来ていることに気付いているのだろう。だからあーみんを探すのにかこつけてその場を逃げ出してしまう。そのせいで(会長から逃げて来たように見える)北村にダンスを申し込まれ、却って恋心を加速させてしまう。そんな2人を見守る竜児、親の心子知らずならぬ子の心親知らずといった具合。

#14:しあわせの手乗りタイガー

文化祭から生じた幸せの手乗りタイガー伝説をベースに、それぞれの幸せってなんだ? と云う問いを投げかける回。同時に、幸せを齎す筈の大河本人はどうすれば幸せになれるんだ、てことに竜児が悩んだり。本当に彼は大河が大事なんですね。親心だろうけど。とりあえず北村とくっつけば幸せになれる筈、とは思ってないようだ。

一旦は引いたように見えたあーみんは竜児のおせっかい焼きと子供発言に頬を染めてるし、みのりも福男レースの写真で赤くなってる。大河は北村との噂に有頂天で、錯綜する恋愛模様は進展したと云うより爆発点を目指して緊張の度合いを深めて行ってるように見える。その導火線となるのは会長の件で悩んでいる北村なのか。

やっちゃんの3人家族発言に反応する大河、やっぱり家族が欲しいみたい。

#15:星は、遠く

会長との間になにがあったのか判らないが、やけっぱちになってなにもかも投げ出す北村。彼を捜しに行く途中でみのりは、大人の世界に生きているあーみんがすべてを理解してくれていると思いたい、と竜児に告げる。そんなみのりを竜児は「優しいやつだな」と云うが、彼女は全力で否定する。その言葉に何を隠しているのだろう。

いっぽう大河は家出して来た北村を元気づけようとして逆に優しくされる始末。それでもあれこれ元気づけてあげられたと思っていたら、その寝顔に涙の痕。あんなに優しくしてくれた北村を自分では助けられない、北村が最後の救いなのにと泣きじゃくる大河に竜児はマフラーをかけてやり慰める。これまで散々大河を支えて来たのは(そして今まさにこの瞬間にも)竜児の筈だが、彼はそれとは自覚してないような振る舞い方だ。

オリオン座3連星のくだりは、そのまま竜児と大河の関係をも表しているように見える。ただしこの場合遠く感じるのはお互いが意識しようとしていないから。

#16:踏み出す一歩

大河に振られて落ち込んでいた北村を救い出したのが会長。そりゃ惚れちゃうのも判らないでもない。大河といいあーみんといい、みんな闇を抱えたところへ差し伸べられた優しさにころっと参るタイプなのね。竜児のみのりへの恋心がある種一番普通な高校生の恋愛感情に見えてくる。

そうして最後まで会長の一押しに頼り切ってた感のある北村が立会演説会で一世一代の告白をする訳だが、軽く流されてしまう。自分の大好きな人がこんな仕打ちを受けるのを見て黙っていられる訳もなく、かと云って傷心の北村のそばにいてあげられるのは自分ではない。それでも北村のためにしてやれることはなにか。かくて殴り込みに行った大河、結局会長も北村を拒絶し切った訳でないことを知ってへたり込み、自分の恋は実らないことも知る。大河の会長へぶつける叫びが、登場人物たちの性格をすべて物語っている。優しさと臆病さは紙一重だってことに。

それにしても会長は北村が振られるとこを見てたのか。それつながりで2話の北村は階段室の上に立ってたのか?

#17:クリスマスに水星は逆行する

北村の恋愛事情に一応のケリがついたところでOPメインから北村退場。物悲しさを漂わせて残る4人のすれ違いを演出する感じ。EDからは完全に退場しちゃった。

自分の恋はほぼダメだと知った大河はそれならばと竜児とみのりとの仲を取り持つ画策。もっともみのりは自分の好きな竜児が親友の大河と相思相愛の仲ではなかったと知って動揺中。親友の恋人を奪うと云う罪悪感はなくなったにせよ、どう見ても依存関係にある2人の仲を割いてまでその気持ちを押し通すことはできないみたい。大河は大河で自分のことを「お邪魔虫」って云ってるし、それは誤解されるからと云うよりも、嫉妬めいたものを含む言葉の選びようだろう。

北村とは赤くはなってもキョドらずに会話できるようになってる大河は、やっぱり吹っ切れたんだと思われる。竜児は竜児で外野が大河と北村をくっつけようと(北村が好きな木原は逆に竜児x大河を推すけど)策動するのがなんとなく気に入らない自分にとまどいを覚え始めている。

クリスマスに大はしゃぎする大河は、無垢と云うよりそこに縋りたいものがあるんだろうなと云う描写だ。

#18:もみの木の下で

竜児と大河、みのりの関係に不自然さを見て、蚊帳の外に放り出されてる自分が悔しいのか、あーみんは竜児に八つ当たり気味。でも曖昧な云い方をしてるから鈍感な竜児にはちっとも通じない訳で。はっきり云えばいいのに、云えないのが乙女心か。

クリスマスに込める思いを吐露する大河。家庭の事情もあるだろうが、少なくともミッションスクールでのボランティア活動は、大河の優しさの形成に役立ったと思うぞ。文化祭の終わりに「1人で生きて行けるから」と云っとき乍ら、やっぱり1人じゃダメだってこともバレちゃう訳で、竜児はそれに気付いたような感じ。

そうして衝撃のツリー倒壊事件。「お前を手伝うんじゃなくて、俺のために〜」と云う竜児にハッとするみのり。それは竜児の心の奥底が仄見えてしまったからだろうか。そこにあるのは自分への想いではなく、大河を大切にする想いだってことに(相変わらず竜児自身は自覚してないけど)。「元通りにはならないよ」と弱音を吐くみのりと「直るんだ、何度でも」と自分に言い聞かせるように呟く竜児の対比が印象に残る。

#19:聖夜祭

この回のキーは竜児のマフラー。家に帰ってからも竜児の巻いてくれたマフラーを身に付けたまま、「誰にも縋らずひとりで」と呟き乍らそのマフラーに顔を埋めて、不審クマに立ち向かう時もちょっと手をかけてる。そうして「誰にも縋らず?」と疑問を抱いたところでサンタクマ竜児登場。どんなに陳腐な構成と云われようがここの流れは秀逸だ。

折角みのりとうまく行くようお膳立てして来たのに、大河を一人にさせたくないと戻って来た竜児にバカバカ云いつつも、「みのりんと<万一>うまく行ったって〜」と無意識に本音が出てる。

その竜児を無理矢理追い出し返しそびれたマフラーを再び手にしたところで、漸くなにが自分に必要だったのか自覚して竜児を追って飛び出してしまう訳だが、この号泣は切ないと云うよりも悲痛でしかない。それは大河が大人じゃなくて子供だから。恋人を失うのではなく家族を失うのだから。

みのりも親友のそんな姿を目にした日にはトラウマものだろうに。これで竜児の想いを受け入れたらただの鬼畜だよ。

#20:ずっと、このまま

冒頭の初詣、北村を拝む大河、と云うことは、北村が失恋大明神で通ってることからするに、竜児への想いを告白しちゃったってことだろうか。そしてそれを振り払いたいと。みのりのために?

こうなると大河のサポートは意地と云うかやけくそと云うか、竜児とみのりをさっさとくっつけて踏ん切り付けたいような感じ。今頃大河が北村と普通に話せるようになったって気付いてる竜児は、どれだけ鈍感なんだと。まあクリスマスまではみのりへの恋心が意識上強かったし、北村に実質的に振られた格好の大河を傷つけたくなくて、2人の関係から無意識に目を逸らしていただけかもしれない。

みのりは自分と竜児を結びつけようとする大河が竜児のことがすきだって知っているから、そんな大河の行動にはちょっといらついてる感じ。だから竜児としてはせいいっぱいの勇気を出したであろう「よく見てる」発言にも「わーお、衝撃の告白じゃん」と寂しげに返さざるを得ない。3話では北村が同じことを大河に云ってたが、今回とは状況がまるで異なる。

#21:どうしたって

この回のキーアイテムは髪飾り。大河にとっては竜児とみのりとを結ぶ象徴であって、だから喧嘩の際に飛んで行ったそれを失うまいと遭難してしまう。竜児にとっても髪飾りは自分とみのりとを結ぶシンボルだけど、それはつまり大河自身なのだから、手に取るシーンに「もう絶対離してやらねえからな」と云うセリフが重なる訳だ。

そして助けにきた竜児を北村と勘違いしたまま本心を吐露してしまう大河、「竜児のことが好きなんだもん」からEDの主夫竜児のシーンに繋ぐ演出がステキ。

ところでAパートの竜児失恋宣言で、北村が呆然とした表情をしてたが、あれは正月の件とで状況に得心が行ったってことなのだろうか。あーみんとみのりの喧嘩はもうお互い寸止め韜晦のしすぎで余計にこじれてってるだけな気がする。こうなると16話で会長に喧嘩をふっかけた大河の言動の方がよっぽど救いがある。あーみんの云う、みのりちゃんにひどいこと云った、てのは罪悪感の件。

#22:君のいる景色

ゆりちゃん先生のトラウマ勘違い発言はともかく、もはや竜児もはっきりと大河を意識せざるを得ない状況に追い込まれて、もうみのりのことはどうでもいいみたい。と云うかそんなこと考えてる余裕もないか。

雪山の一件をなかったことにしたいのは大河も竜児も同じ、思いやりと云う名の臆病さだ。その臆病さはみのりにも会長にも、あーみんにも北村にもあったんだけど。

「ドジ、だよな」発言は当然着地失敗のことなんかではなく、知らずに本人に告白しちまった件だろう。

#23:進むべき道

自分を進学させるために仕事を増やしたやっちゃんが過労で倒れた。これまで人を支える一方だった竜児は、自分もまた支えられていたことに気付き、自らの無力さにうち拉がれる。そんな竜児を必死に励ます大河にやっちゃんの姿をオーバーラップさせる彼は、母親はもちろん、大河にも支えられていたことを知るのだろう。

そしてバレンタインデー当日、竜児はおろか、みのりにもあーみんにすら(修学旅行のみのりとあーみんの口論であーみんにはバレてるっぽいことは判ってたかもしれないけれど)自分の想いを知られた大河は思わずその場を逃げ出す。みのりの大河に投げかけるせりふが諸刃の剣なのは、そうしようとしてそれができなかった自分への失望のせいもあるだろう。お前がそれを云うなと云うのは簡単だが、いつだって人は自分ができなかったことを身近な人に託したくなるものなのだから。決断を迫られる竜児。あと2回あるのにもうクライマックスな感じ。でも恋愛沙汰だけならともかく、家族の話を描くならあと1回じゃ終わりようがないな。

ところであーみんが云ってた、タイガーが傷ついてるのを見た、と云うのは、たぶん、花火の時のことだと思われる。

#24:告白

前々回で臆病さに変わってしまった竜児の優しさが強さへと変わる回。自らの恋心(憧れ)を押し通すよりも、散々面倒を見て来た寄辺ない女の子の気持ちに応えることを選ぶ(それは同時に、前話で自らも必要としていたと知った存在を選ぶことである)竜児を励まし、大河のもとへ送り出すことにかこつけて間接キスするみのりがいじらしい。

そうしてとまどう竜児と大河の前にそれぞれの母親が現れ、ともに逃げ出す羽目になる。二進も三進もいかなくなって駆け落ちを選択する2人の姿が子供っぽさを醸し出すが、やっちゃんまで逃げ出したことで竜児はそれでは何も解決しないことを理解する。

川での竜児のプロポーズには、それまでの優しさが強く言葉となって溢れ出た感が横溢していよう。この流れはとても印象に残る場面だ。

もうひとつ大事な場面は、電車の中で大河がやっちゃんの3人家族発言の時の思いを語るところ。ここの描写に、彼女が何を欲していたのか、これ以上ないくらいはっきりと表現されている。

#25:とらドラ!

竜児の一計で和解したやっちゃんと祖父母の姿を見て、大河は改めて家族の意味を噛み締める。結局大河が欲しかったのは恋人じゃなくて家族。大河の「家族…」という呟きに、他ならぬインコちゃんが写る(サブタイトル=タイトルバックのカット)のが象徴的だろう。それは自分がここにいていい寄辺となる存在、甘えることも叱ってくれることもできる存在。北村に恋をしたのは、ありのままの自分にぶつかって来てくれたその優しさのため。でも自分に自信が持てずに一度振ってしまい、そこから歯車が狂い出した。既に新しい恋を始めてしまった北村に恋着することで竜児と出会い、奇妙な依存関係、あーみんの云う不自然な関係、幼稚なおままごとを続けるうちに、いつしかそれが大切な絆になる。

恋が芽生えて愛になり家族を形成するのではなく、最初から家族の愛情を育んで行った訳だ。だから2日目の夜のそれこそ幼稚な結婚式は、恋人同士の甘いキスと云うよりも、親子のような優しいキスになる。何度もねだる甘えたな大河は本当に温もりが欲しかったんだなと、それに応える竜児の優しさにほのぼのとする。

そうしてこの回もマフラーがひとつのキーアイテム。竜児のマフラーにくるまって帰って来た大河は、置き手紙とともにそれを残して一人旅立つ。それは竜児の庇護から離れていくシーンの象徴であると同時に、対等の身となって戻ってくるための、親子の関係ではなく竜虎並び立つ夫婦の関係となるために残して行かなければならないシンボル。

別れの前に竜児に会えば一度は引き止められるだろうし、その優しさに今一度触れれば決心が揺らいでしまうことも判っているから、彼女は会わずに去るのだと思う。それは最後のわがままだけど、竜児はそれをも恐らく許してくれるだろう、だからこそ生まれ変わり自分に誇りを持って愛しに戻りたいと。

EDはどうみてもデレです。ごちそうさまでした。

#全体

セリフだけでなく、ちゃんと絵で感情を表現している部分がよくできている。原作は挿絵付きでも小説という言葉のメディアだから、アニメよりは判りやすいのは当然であって、そこを絵と音(BGMと声優の演技)でこれだけ描ければ十分だ。もちろん言葉で表せない以上、シーンの読み取り方に差異が出るのはしょうがない。それでも穿った見方をしなければ比較的判りやすい流れだろう。

物語の冒頭とラストに同じモノローグが来るのも、なにより2羽のスズメの絵で額縁にいれるのも、オーソドクスで好感が持てる。

恋愛物語がビルドゥングスロマンの要素を持つのは格別不思議なことではない。とりわけ惚れた腫れたの上っ面だけを描くのではない場合、そこにはどうしても主人公たちの心の成長が描かれることになる。なんとなれば愛とは他者の受容であり、包容であるからだ(それは単に受け身であることを意味するのではない)。まして稚い高校生らを物語の中心に据える場合、終末に至って彼らになんらの成長も見られないとすれば、それこそ生暖かい夢と幻想のモラトリアムに終わるであろう。
大河ははじめから求めることと与えることの不均衡のなかで、前者の期待を裏切られ続け後者を全うしようとした(20話)。竜児は与え続けることで求めることの意味を知った(23話)。それはお互い2人だけの関係に留まることなく、彼らを取り巻く友人、家族への想いのうちに醸成される。
それを陳腐な、語り尽くされた愛とまとめるのは容易い。しかしそれが何度でも描かれると云う事実は、それこそが人間の営為のなかで重要な意味を持っているからではなかろうか。

その他、おまけ

ずっと気になってるのは、なんで「逢坂」を「あいさか」と読ませてるのか。ふつう「おう(お)さか」だと思うのだけど。 人名で「あいさか」て読ませる地方あるのかな。
ちなみに「あいさかaisaka」を逆綴で読むと「アカシアakasia」になるのは単なる偶然なのかな。
アカシアacaciaの花言葉は真実の愛、秘密の恋。
いくらなんでも穿ち過ぎか。

「逢坂」「逢坂さん」「大河」「おまえ」てのが竜児の大河への呼びかけ方だけど、全編通してたった1回だけ「てめえ」て云ってる。竜児の亡き(この時点ではそう信じてる)父への思いが溢れ出たシーンで、その直後に大河が彼の気持ちを選び取る流れが泣けてくる。11話。

アイキャッチのロゴの扱い方をこじつけてみる見方をネット上でちらほら見かけたけれど、確かに意味ありげでなさそうな気もする。
もっとも、19話でピンクが右下のオレンジに向かって右回り、そのオレンジが左下の水色に向かって左回りってのはなんか気になるし、17話は逆五角形だ。クリスタルが出てくんのは18話だけど、竜児が直してる途中で掲げた星のまだ欠けてる部分が、この逆五角形を正立させたときのちょうど水色にあたると云えば云えなくもない。
オレンジと云えば、14話で大河が竜児に買って来てって云ってるのがオレンジジュースだっけ。

22話で、鍵なくしたからって窓から帰ろうとした大河、でも4話ですでに竜児に合鍵持たせてたのだから、借りれば良かったのに。正月開けにでも奪い返したのか?

2ndOPのサビ前は、ストレートに考えれば大河が転校したあとじゃなくて、正月開けから修学旅行前までの1月あたりのイメージだと思う。でないとみのりんが髪飾りを持ってる理由がないし、25話ED前の描写からすれば転校したことをみんな納得して応援してるんだから、あの5人が物憂げな表情を見せるのも変だ。大河自身、すべてを受け入れて変わることを選んでるんだし、竜児も「この気持ちは、壊れない」て云ってるのだし。ラーメン屋の前で竜児がマフラーを大河巻き(そんな言葉はねえけど)してるのは、この際気にしない。

2話の北村の友達宣言、あれは大河の竜児への想いに気付いたからこそであって、北村にとっても竜児は大切な親友だから、ともに竜児を大切に思える者同士、すごくいい友達になれる、て云う発言だろう。北村の優しさは、あーみん同様、それを本人たちが自覚するまで(つまり自分自身で動き出すまで)ははっきりとは伝えないことに集約される。それが却って泥沼の展開を招くのだとしても。

#BD-BOX新作:弁当の極意

事前情報でスピンオフ「俺の弁当を見てくれ」からとは聞いてたので、ただのドタバタかと思いきや、オリジナルの額縁が付いてちゃんとまとまっていた。食べる人のことを思って作るもの、とは料理ものの基本と云っちゃ基本だが、それを経とした脚本の勝利だろう。また額縁部分をモノローグだけで会話なしで演出するのもわりかし常套手段だけど、これもすっきりと嵌っている。「とらドラ!」本編のエッセンスを凝縮したような物語構成だとおもう。

この額縁=お花見シーンは時系列上「現在」、つまり本編25話エピローグ以降の時点に置かれていて、おそらくは卒業後4月。冒頭の大河は見たことのないキッチンに立っているし、能登は木原をジト目で見てるし、みんなして竜虎を冷やかしてる。北村は米国留学する筈だが秋入学なのでまだ準備中で日本にいるのだろう。

大河の苗字はもう逢坂ではないし、もちろんまだ高須でもないだろうから、額縁部分にセリフを入れなかったのは当然と云えば当然。オリジナル部分と云えば本体終盤のおにぎりネタで4話を使ってくるのもセンスがいい。

もうひとつ、EDバニラソルト、最後にちび虎が駆け寄って行く男子2人が歩いてる。本編のバニラソルトじゃ歩いてなかったのに。これはなにを意味するだろう?

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